核融合炉の定常稼働に最適なヘリカル式で、連携を深化
弊社は、2024年3月、自然科学研究機構 核融合科学研究所(所在地:岐阜県土岐市、所長:吉田善章、以下「NIFS」)と、NIFS内に「HF共同研究グループ」を設置することで合意し、同4月に活動開始しました。
さらに本部門の設置を受け、NIFS内に専用実験スペースが設けられました。これによりHelical Fusion とNIFSとの協働を一層強化し、核融合エネルギーの社会実装に向け世界をリードすることを目指します。
ー背景・意義
世界の人口は2050年までに約17億人増加すると予測*され、世界的な電力需要の急増に対し、既存発電方法のみで応えることは厳しい見通しです。核融合発電は、太陽の輝きと同じ原理を使ったクリーンで安全性の高い発電方法であり、海水からほぼ無尽蔵に採取可能な燃料を用いることからも、こうした世界的な課題を抜本的に解決する技術として期待されています。日本は、エネルギー自給率が 13.3%**という低水準にあり、依然化石エネルギー依存度が80%を超えるため**、将来的なベースロード電源確保を視野に研究開発が進んできました。
特に安定運用の観点からも実用化が有力視されるヘリカル型核融合炉の研究において、NIFSは世界最大級の核融合炉実験装置である「大型ヘリカル装置(LHD)」を有し、1989年に政府により設立されて以来、世界有数の成果を残してきました。Helical Fusionは、NIFSの長年の知見を受け継いで2021年に設立、スタートアップならではのスピード感で世界初の定常商用炉開発を強力にリードしています。
これまでも、両者間で個別の共同研究を複数進めてきましたが、今後より強固な協力体制を構築することで、一刻も早い核融合エネルギーの社会実装を目指します。
(参考: 核融合科学研究所からのリリースはこちら)
*国際エネルギー機関(IEA)年次報告書「2023年版世界エネルギー見通し」(World Energy Outlook 2023)
**経済産業省資源エネルギー庁 「令和4年度エネルギーに関する年次報告 (エネルギー白書2023)」
<Helical Fusion:田口昂哉(代表取締役CEO)からのコメント >
Helical Fusionは、NIFSの30年以上にわたる世界最先端の豊富な研究実績と知見を元に誕生したスタートアップです。これまでも、高温超伝導や液体金属ブランケットなどの領域で数多くの共同研究をNIFSと実施してきました。昨今、商用化に向けた定常運転核融合炉としてのヘリカル方式に対する期待が世界的に高まっていることから、両者でさらに連携を強化して開発を加速すべく、この度の部門設立、実験スペースの設置に至りました。これにより、共同研究の加速に加えて、高温超伝導分野をはじめとした自社独自開発の進捗も見込んでいます。協力体制を築いてくださるNIFSの方々に感謝するとともに、皆様の期待に応えられるよう一層研究開発に尽力し、定常運転核融合炉開発の世界的な競争をリードしてまいります。また、我が国の基礎研究からものづくりの高い技術までを幅広く活用できる新たな産業創出に貢献します。
<核融合科学研究所:安原亮(産学官連携部門長)からのコメント>
この度、核融合科学研究所はHelical Fusionと協力し、ヘリカル型核融合炉の実用化に向けた研究開発を行う産学官連携研究部門「HF共同研究グループ」を設置しました。この共同研究グループでは、Helical Fusionと核融合科学研究所の専門知識とリソースを結集し、ヘリカル型核融合炉の実現に向けた研究活動を行います。核融合科学研究所は、世界最高水準の研究活動を通じて、核融合科学の進展に寄与し、広く科学技術の基盤形成に貢献することを目指しています。本研究グループで得られた成果が、持続可能なエネルギーの実現に向けた一歩となることを期待しています。